2005年10月8日結成集会講演記録PDFファイル





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「九条の会・はつかいち」結成のご報告
「九条の会・はつかいち」結成の集い開会挨拶

記念講演

憲法をめぐる今日の状況
〜改憲勢力の真の狙いと国民運動の課題〜
小森陽一さん
(「九条の会」事務局長・東京大学教授)

広島の思いを語る
森滝春子さん
(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会・共同代表)

「九条の会・はつかいち」結成アピール

「九条の会・はつかいち」結成の集いは、2005年10月8日に開催されました。



「九条の会・はつかいち」結成のご報告

2005年10月8日に結成集会
「武力によって平和を生み出すことはできない」
「平和な世の中を実現するためには何としても憲法第九条を守らなければならない」
という思いが、私たち廿日市市周辺住民を結集させました。

集会には、講師として小森陽一さん、森滝春子さんをお迎えし、かけつけてくださった廿日市市長、廿日市市議会議長の挨拶をいただきました。186人の幅広い住民の参加があり、意義のあるスタートをきることができました。

憲法改正の国民投票があった場合でも、それぞれの地域で過半数を大きく超える「憲法改悪反対」の意志表示ができるよう、共に頑張りたいと思います。

(九条の会・はつかいち)


開会の挨拶

「九条の会・はつかいち」結成準備会世話人一同に代わりまして、開会のご挨拶を申し上げます。
日本に住む私たちは、60年もの長いあいだ、戦争で人を殺したり殺されたりすることなく暮らしてまいりました。これは、明治の初めから1945年の終戦までの戦争続きの歴史を考えると、信じられないような長い有り難い平和の歴史です。

いっぽう、地球全体を見ると、現在もあちこちで戦争が行われています。多くの兵士が心ならずも戦場に駆り出され、人を殺したり自分が殺されたりしています。兵士だけでなく、ふつうに暮らしているふつうの人も、小さな子どもも、生まれたばかりの赤ちゃんも、自分達が望まない戦争によっておおぜい無残に殺されています。

この60年間、私たちはそのような無残な経験をしないで過ごすことが出来ました。
それは何故でしょうか。

日本国憲法第9条が私たちを守ってくれたから、と私たちは確信しています。

世界で最も進んだ憲法、世界に広がるべき憲法、人類が平和に生き続けていける方向を指し示した憲法が、歴史的にも地理的にも稀な平和を私たちに与えてくれました。この憲法のもとに生きている幸せを、私たちは感謝せずにはいられません。

9条のもとで平和に生き続けたい。これがふつうに暮らしているふつうの人の願いです。

しかし、いつのまにか、9条の改変を一部の政治家が公言するようになり、その動きが急速に広がり、具体化しようとしています。9条の改変は、私たちや子どもたちが、いやおうなしに戦争に巻き込まれていくことに繋がります。それは私たちの未来を閉ざすことです。絶対に許してはなりません。

廿日市のみんなの力を寄せ合って、出来る限りのことをしたい。

そう考えて、廿日市に住む私たちは「九条の会・はつかいち」を立ち上げることにしました。その結成の集いに、このように多数の方にお集まりいただき、世話人一同喜びにたえません。ありがとうございました。のちほど入会のご案内を申し上げます。是非ともこの会の活動にご参加ください。

さて、私たちに何が出来るか。何をしたらよいか。いろいろ考えられますが、まずは憲法9条の理念をよく理解すること、それからこの世界の現実を知ることが出発点になるのではないでしょうか。

本日は、小森陽一さん、森滝春子さんという、この会の出発にあたって、これ以上の人選を望めないお二人が、お忙しいなか、私たちの求めに応じてお越し下さり、お話しくださることになっています。しっかりお話を聞くことで、私たちの活動の第一歩を踏み出したいと思います。

みなさま、よろしくお願いします。


結成集会講演記録

小森陽一さん(「九条の会」事務局長・東京大学教授)

「憲法をめぐる今日の状況 〜改憲勢力の真の狙いと国民運動の課題〜」

9・11総選挙の特徴

ただ今ご紹介にあずかりました小森です。(到着が遅れたことについて)ご心配かけて申し訳ありませんでした。ただ、東京は毎日数人の方が必ず電車で投身自殺をするという状況になっているんですね。ここにも国民に痛みだけを押し付けている小泉政治の許しがたい現実が現われていると思います。

その小泉純一郎という極めて特殊な政治家のもとで行われた「9・11小泉大劇場総選挙」について、まず私の考えを述べさせていただきたいと思います。

この選挙で2つのことを小泉はやったと思います。一つは、ナチス・ドイツが開発したマスメディアを操る「沈黙のらせん」という方法ですが、今回の解散から総選挙までの間で、小泉首相はこれを見事にやってのけました。それから、二つ目は憲法改悪の予行演習、つまりリハーサルをやったことです。この二つが今回の総選挙の特徴だと思いますね。

「沈黙のらせん」という意識操作

まず「沈黙のらせん」とはどういうものか。これは実はゲッべルスを中心とするナチス・ドイツの情報戦略ですが、戦後のアメリカのマスメディア研究の中で、これがどういうものであったかが明らかにされていきます。そして、ナチスの情報操作の方法を踏襲しているのはアメリカだということを忘れてはなりません。その話はあとでお話ししますが。

「沈黙のらせん」というのは4段階あるんですね。1930年代にマスメディアを使って大衆を煽動する政治・大衆扇動政治が現われましたが、これはドイツのナチズムも、イタリアのファシズムも、日本の治安維持法的天皇制主義も、みんなベースは普通選挙なんです。治安維持法も普通選挙法と抱き合わせて通っていますね。つまり、非常に広汎な人たちが政治参加をしていくという一定の民主主義的な仕組みのなかで、ナチズムも、ファシズムも、天皇制主義も構築されたことを忘れてはならないと思うんです。ドイツもイタリアも日本も、あまりにも悪政が続いたために、もう侵略戦争をするしか国のなかが持たない。そういう状況の中で行われるのが大衆煽動政治、英語で言うとポピュリズムです。そして、その基本的な意識操作が「沈黙のらせん」と言われているやり方です。

戦争国家を作るために、先ず外側と内側に敵を作らなければならない。「こいつらがすべて悪い」。「私らの生活がこんなに苦しいのはこいつらが悪い」。そういう敵を作るときに「沈黙のらせん」が使われたわけです。ドイツの場合は、外の敵がソ連と共産主義で、内側はユダヤ人です。日本の場合は、外の敵が中国、内側が共産主義者・非国民。大体、外と内とセットで敵を作ります。

しかし、例えばドイツの場合、ソ連とは独ソ不可侵条約を結んでいますし、ユダヤ人は大体みんな金融、銀行とかお金が流通する経路の仕事に就いているわけですから、誰も敵とは思っていません。それをいきなり権力者が大きな声で、「こいつらが敵だ!」と言うわけです。誰も彼らが敵とは思っていませんから、第1段階では有効な批判や反論が出て来ない。

第2段階では、その有効な批判や反論が出て来なかったことをもって、権力者はまた大きな声で、「これは正しい」「ソ連を敵にし、ユダヤ人を敵にすることは全国民的な課題である」と言うわけです。
そして、第3段階で権力者が言ったことに対する反論や批判が出てきても、「それは国民の利益に反する」「国益に反する」「国民に対する裏切りだ」、日本風に言えば「非国民だ」と言って弾圧し、抑圧していく。そうすると第4段階、それに恐れおののいた多くの人々が、「敵はこいつらだ」という言い方に対して、もはや反論も批判もせず、沈黙がどんどん「らせん」を巻いて深まっていく。

今回の選挙、この通りでしたね。衆議院で議論されているとき、国民の郵政民営化問題についての関心はせいぜい17パーセントぐらいでした。社会福祉はどうするのか。小泉さんの靖国参拝によって行き詰った中国や韓国との外交はどうするのか。もう山積みの問題がある。そう、ほとんどの人が郵政民営化には関心を持っていませんでした。そして衆議院で5票差で可決された。自民党の中でも反対している。ここらでちょっと面白くなってワイドショーで取り上げられはじめましたが、郵政民営化問題が今の日本の最大の課題だなんて誰も思っていませんでした。「今度の国会は郵政民営化国会だ」と言われても、「何言ってるんだ」というのがおおかたの反響でしたね。

けれども参議院で議論が始まり、どうも参議院では否決されそうだということが見えて来てから、小泉首相はある特別な言い方をし始めました。「郵政民営化に小泉純一郎という私・政治家は、命を懸けて来た」「小泉構造改革の本丸である」「これに反対するというのは小泉内閣不信任と同じだ」。そして、最初はステルス作戦とか言って郵政民営化に反対する参議院議員は自分の名前を伏せていたんだけれども、「もう、ちゃんとはっきり言う」というふうになった時に、「郵政民営化に反対することは倒閣運動、つまり内閣を倒す運動だ」と言い始めたわけです。

9・11総選挙は「憲法改悪のリハーサル」

何故かお分かりですか。解散するためです。周りの人はほとんど解散するとは本気で思っていなくて、亀井静香さんも本当にやるとは思っていなかった。でもやった。そして、解散をちゃんとやっていく手立て・お膳立てを、小泉純一郎は事前にしっかり立てていたわけです。

なぜなら、現在の日本国憲法には、「総理大臣のやりたい法案が参議院で否決された場合、衆議院を解散していい」という条項はありません。現在の憲法にあるのは、「衆議院で内閣不信任案が可決されたり、信任案を出して否決されたりした場合、10日以内に衆議院を解散しないのなら、内閣は総辞職しなければいけない」という条項です。つまり不信任案に対する内閣総辞職の対抗軸として、衆議院の解散というのがあるわけです。今回の解散は「参議院での郵政法案否決を内閣不信任案とみなす」という限りなく憲法違反に近い「みなし解散」です。まず解散そのものにそういう問題がある。

実は、8月1日に出された自民党の新憲法第一次草案の中の解散権のところには、条件なしで「内閣総理大臣は衆議院を解散する権限を持つ」と書いてあります。ですから、今回の解散は自民党の憲法改悪草案を先取りした「みなし解散」だったわけです。このこと自体が立憲政治を脅かしている。それをマスメディアはいっさい言いませんでしたね。ここに今回の解散そのものの許しがたいカラクリがあるわけです。ほとんど国民をごまかしている。

でも、ここらへんが小泉劇場演出家兼主演俳優としての小泉純一郎という政治家のうまいところですが、解散のときの記者会見で何と言ったか。「参議院では否決されました。しかし、郵政民営化問題は小泉構造改革の本丸です。国会では否決されたが、私は国民の信を問いたい。これは郵政民営化問題をめぐる国民投票です」と言ったんです。そうしたら翌日の世論調査で一気に5パーセントか6パーセント内閣支持率が上がったわけです。お分かりですよね。有権者は「参議院議員よりあんたのほうが偉い」とおだてられたわけです。でも、やるのは総選挙です。衆議院を解散しているわけですから。総選挙というのは一人ひとりの議員が、全体として日本の国をどうするかという全ての政策の問題を問うんです。衆議院というのはそういうことを議論するところですから。それを「郵政民営化イエスかノーか」という非常に単純な二者択一にしてしまった。「二つのうちから一つを選びなさい」。「国民投票です」。嘘ですよね。だって国民投票法案はありませんから。99.9%嘘に近いことを言って、小泉純一郎は国民をおだてたわけですね。
そして、そのあとの総選挙に入ったあとの小泉さんの演説は、「小泉改革の本丸は郵政民営化だ」「郵政民営化イエスかノーか」「改革を止めるかどうか」。これで80%方しゃべっています。このやり方、お分かりですね。「改革」という看板は小泉さんが持っていきました。改革の反対語は「守旧」ですね。いにしえを守る。本当はそれぞれに中身があります。しかし、「郵政民営化、イエスかノーか」と言った瞬間、問題の単純化によって「郵政法案ってそもそもどういうものなの?」「どこに問題があるの?」というようなことが全部消されてしまいます。

「改革」と「守旧」という言葉を並べれば、「改革」のほうが気持ちいい。私たち国民の税金を使った自民党の選挙コマーシャルで、小泉首相はこれを繰り返し繰り返しお茶の間の視聴者に、「あなただけ」に、訴えました。自民党のコマーシャルは見事でした。小泉首相がずっとカメラ目線で「国民のみなさんに反対してもらうんですよ」。「みなさんが主人公です」。

ナチスの時代にはテレビがありませんから、大きな集会に人を集めて、ヒットラーは大演説しなければならなかった。今はしなくていいんです。テレビで一人ひとり、3千万の視聴者がいるわけですからね。多分民主党は広告代理店に裏切られたと思うんですけど、テレビコマーシャルで負けていますよね。小泉さんはカメラ目線ですが、岡田さんは目を視聴者からそらして出てくる(笑)。ま、それはそれとして。

「改革」という言葉を聞くと気持ちいい。心地いい。イメージがいい。でも中身抜きの気分感情だけです。言葉の意味ではなく、言葉に対する快か不快か。今回の総選挙はこれだけで選択を迫るやり方を短期間でやって、「国民を騙せる」という予行演習だった。「改革」か「守旧」か。

8月1日に出された自民党の憲法改悪の草案が、「憲法改正草案」ではなくて「新憲法第一次草案」と名づけられたことの意味はお分かりですね。憲法を本当に国民投票にかけて変えるのだったら、条項毎に投票しなければならないはずです。「変えるのなら1条はどうするか」。「9条はどうするか」。それをやったらばれてしまうからやらない。「新憲法か旧憲法か、さあどっち」と短期間でやれば争点が見えずに一気に騙せる。こういうことが憲法改悪のリハーサルです。国民投票と言ったわけですからね。

でも、国民投票だったら小泉さん負けています。郵政民営化をイエスと言う議員とノーと言う議員に投票された数を比較してみれば、ノーといった議員が獲得した投票数の方が多い。選挙のやり方も結果も嘘だけれども、小選挙区制という民意を反映させない選挙制度の中でこういう事態になっている。そういう日々を私たちは生きているわけです。

言葉の「快」「不快」で二者択一をさせる

重要な国の政策の言葉を、その言葉の意味ではなくて、気分・感情で「快」か「不快」か、その二者択一にしてしまって、国民を騙して戦争に巻き込んでいく。この手法を取っているのがブッシュ政権です。明らかに小泉はブッシュのやり方を真似ました。

ブッシュ政権のこの間の主要な政策のキャッチ・コピーを作っているのは、たった一人のマーケット・リサーチャーですが、最先端の精神分析学、心理学、言語学、そういう人文社会科学の学問の成果を全部横取りして、このマーケット・リサーチャーは何をするか。アメリカ全土にいる何十万というモニターに、ある政策の言葉に関して「この言葉について快ですか、不快ですか」というアンケートを取ります。その結果が「快」だったら「不快」に180度転換する。「不快」だったら「快」に180度転換してアメリカ国民を騙す。洗脳=マインド・コントロールする。

これは特別に私だけが知っている情報ではありません。フランク・ランツというたった一人のマーケット・リサーチャーのやり方に関しては、去年アメリカで特別番組が作られ、今年BS放送で日本でも放映されていますから、見た方はご存知のことですね。

時間があまりありませんので、3つの例だけお話します。

「地球温暖化問題」を「気候変動問題」に

ブッシュ政権の第一期が出来上がったとき、ブッシュ自身も石油会社の社長ですけれども、株価をごまかして巨額の利益を上げて、しかも騙したまま株式を売り抜けして倒産したエンロンというアメリカの最大の石油エネルギー複合企業体が一番大きな献金を出したんです。アメリカとイギリスというイラク戦争を行ったこの二つの国の主要な公共事業、つまり国家予算が一番投入される事業、したがって政治家に一番献金が来る事業は、軍需産業と石油エネルギー産業です。ブッシュ政権の前のクリントン政権は、「アメリカは世界第1位の二酸化炭素排出国であるから、京都議定書に参入する」ということを決めていました。でも軍需産業と石油エネルギー産業は、最も二酸化炭素を出す企業体です。だから恩返しをしなければならない。「いかにして京都議定書を蹴飛ばすか」というのが、ブッシュ政権の出来てすぐの大事な恩返しのあり方だったんですね。

「地球温暖化」というふうに言われていますね。日本ではちゃんとまだそう言っています。「温暖化」というのは方向がはっきりしています。小学生が聞いても「このまま二酸化炭素を出していたら地球がどんどん暖かくなって、南極と北極の氷が解けちゃって、海の水かさが上がって、島国は陥没するんじゃないか」ぐらいの想像力は、「温暖化」という言葉で方向付けられているわけです。だから今年も、いろんなところで「打ち水をやろう」と言ったら子どもたちが一生懸命打ち水をしたり、国会でも「クールビズ」とかいって似合わないボタンはずしの服装でおじさんたちが徘徊するという事態が演じられたりしました。恥ずかしいことですけれど、私が勤務している東京大学でも「時代はクールビズ。クーラーは28℃」というポスターが貼られて、チェックされました。地球温暖化は、大人の人だったら、自分の子どもの頃と比べて「夏はむちゃ暑い」「冬は暖かい」とはっきり実感できます。つまり「地球温暖化」という言葉を聞いた瞬間、多くの人たちが「恐い」「このままだと地球は危ない」、つまり「不快だ」と思うわけですね。

フランク・ランツは「これを転換しなければいけない」と考えて、どうしたかというと「気候変動問題」と言い換えたわけです。ぎりぎり嘘はついていない。確かに天気が変わることではある。ただ、「温暖化」という本質的な方向性は全部消されている。そして共和党の議員たちが、ある日から一斉に、全ての場面で「気候変動問題」「気候変動問題」「気候変動問題」と言いはじめて、2週間ほど経つとCNNもABCもみんな「気候変動問題」とニュースのアナウンサーとキャスターが言うようになる。一か月経つと新聞も全部そうなる。ご存知のとおりCNNやABCは世界全部にネットワーキングしていますから、英語圏には、(院内感染という言葉がありますが)メディア内感染していくわけですね。知らないうちにBBCも「気候変動問題」といい、オーストラリアやニュージーランドなどの英語圏にはダーッと広がってしまう。英語圏では今「気候変動問題」ですよ。

このことは日本でほとんど知られていませんが、その言葉のからくりが非常にくっきり見えた日が一日だけありました。それは、ロンドンで地下鉄のテロがあった翌日です。スコットランドでサミットが開かれていましたね。ですから現地に特派員が送られています。現地の特派員は現地で聞いた英語を日本語に直しますね。そうすると、朝のワイドショーは大体そうでしたが、現地の特派員に「誰々さん今日はどうですか」と聞くと、「今日は午前中『気候変動問題』について議論するはずでしたが、ブレア首相がテロでロンドンに戻らなければならないので夜に延期になりました」と言うわけです。スタジオでは「ああ、そうですか。今日は『地球温暖化問題』で議論する予定でしたが、ブレア首相がロンドンに戻らないといけないので夜に延期になりました」。気づいていないんですよ。「気候変動問題」と「地球温暖化問題」という二つの別な言葉なのに。

何人が気づいたか分かりませんが、そういうところで操作されているわけです。だから何気ない言葉一つに厳密な問題があるわけですね。それをいち早く見抜いて、「そうではない」と言う。そういう能力を私たちが持てるかどうか、これが今の運動の大事なところです。

「相続税」を「死税」に

二つ目の問題です。今のアメリカは双子の赤字です。貿易も赤字だし、国家財政も戦費がかさんで赤字。それなのにブッシュ政権は、お金持ちのためだけの減税をやっています。でもなかなか通らなかったのが日本語で言うと相続税です。英語で言うと、あ、心配しなくていい、英語で言いませんけどね(笑)。ニュアンスとしては遺産税ということです。

チャールズ・ディケンズが「大いなる遺産」という有名な小説を書いていて、5年ぐらい前に映画化されましたが、「遺産」という言葉には、お貴族さまで、大財閥で、セレブで、棚からぼた餅転がり落ち、みたいなそういうイメージがあるわけです。これでは駄目だと。それでどうしたか。ここだけ英語で言わせてください。「デス・タックス」にしました。死んだらかかる税ですから嘘はついていません。でも「死税」です。こんな不吉な言葉はない。そうしたら、よく内容も分からないうちに、移民して来たばかりのヒスパニックの人たちまで「俺が死んだら税金がかかるのか。それは駄目だ」。それで、一気に減税案が通ってしまった。

「テロとの戦い」という言葉の心地よさ

そして、極めつけは今日お話しする憲法の問題と深く関わることです。
2001年、9・11事件が起きました。9・11総選挙のちょうど4年前です。ブッシュ政権は「この事件を起こしたのはアルカイーダというテロ組織で、アルカイーダの指導者はビン・ラディンである」としました。
「彼らはアフガニスタンとパキスタンの国境線に潜んでいる」。
「だからアフガニスタン政府はテロリストを出せ」。

アメリカは言うことを聞かないタリバン政権に対して迫ったわけです。当時、世界中が9・11事件にショックを受けていましたから、「アメリカはCIAという世界最大のスパイ組織を持っているから本当なんだろう」と信じてしまい、何の根拠もないのにアメリカがアフガン攻撃をしたことを許してしまいました。

この年の暮れ、日本の国会では「テロ対策特措法」が通過させられて、アフガンを攻撃するためにインド洋に展開しているアメリカ軍の艦隻、空母エンタープライズを中心とした艦隻に、私たち国民の税金を使って無料で燃料を供給するようになりました。特措法というのは1年限りのものですよね。それをずーっと延長し続けて、今度2005年も閣議決定だけで小泉政権はこれを延長しようとしています。日本はインド洋に出ているアメリカの無料ガソリンスタンドになっている。この石油が高値で止まっているときに無茶苦茶な無駄遣いです。でもそうやって日本も協力し、2002年、アメリカの言うことを聞かないタリバン政権はつぶれました。「アフガン解放」とか言って。でも肝心のビン・ラディンとアルカイーダは出て来ませんでした。

ビン・ラディンが次にいつ出てきたかというと、都合よく第2期ブッシュ政権を誕生させる選挙の投票日の1週間前ぐらいです。またビデオを送りつけてきて、「ブッシュに投票しないとビン・ラディンが怖いぞ」というイメージをアメリカ国民に浸透させたわけです。時間がありませんから、今日はブッシュ家とビン・ラディン家の仲の良さ、父親の時代からのお付き合いについてお話しする時間はありません。マイケル・ムーア監督が撮った「華氏911」はビデオ屋さんでも借りられますし、DVDも売っていますので、是非それぞれの地域の学習会でご覧になってください。

2002年、ビン・ラディンは出て来なかった。ブッシュは、「世界はテロの脅威にさらされている。このテロリストと連携している『悪の枢軸』がイラク、イラン、北朝鮮だ」とこう言いました。わざわざ「悪の枢軸」という言葉を使いましたが、何故でしょうか。それはアメリカ国民の記憶の底のほうから、57年前、つまり1945年、第2次世界大戦にアメリカが勝利した記憶、その正義の味方アメリカのイメージを思い起こさせるためです。「枢軸」という言葉は、先ほどお話ししたナチズムのドイツ、ファシズムのイタリア、治安維持法制的天皇制主義の日本、この3国が国際連盟を脱退して、日独伊防共協定を初めとして3国だけの同盟を結んで、侵略戦争に次ぐ侵略戦争を行っていきましたが、この3国を「枢軸国」と呼んでいたんです。

ヨーロッパの人々の自力でドイツとイタリアを潰すことはできなかった。アジアの人々の自力で日本を潰すこともできなかった。アメリカが最終的に参戦して、ようやく勝ちました。そういう「正義の味方アメリカ」のイメージをもう一回蘇らせたわけですね。そして何と言ったか。「ウォー・オン・テロル(War on Terror)」と言ったんです。「テロとの戦い」。

第2次世界大戦は英語で言うと「ワールド・ウォー・セカンド(World War )」です。実は、第2次世界大戦以降、「ウォー」と名の付く戦争はアメリカ合衆国はしていないんです。すべては「自衛・ディフェンス(Defense)」という名の戦争です。この「ディフェンス」という名の戦争が今日のお話のこれからの中心になります。

「ウォー」という戦争をやるためには、アメリカ合衆国憲法では「議会で決議をして、相手国に戦線布告をしなければいけない」となっています。そういう制約がある。でも自衛の戦争は大統領判断だけで出来ます。だから、アメリカは憲法違反の「自衛」と言う名の戦争を、第2次大戦以降、世界の200箇所以上に仕掛けてきました。ベトナム戦争まで「ディフェンス」でしたからね。でも一度も勝ったことがない。「ディフェンスという名の戦争をやっていいことは一度もなかった」というのがアメリカ合衆国国民の思いです。「ディフェンス」の評判が悪い。

だから57年間使ってなかった「ウォー」、「ウォー・オン・テロル」と言ったわけです。相手はテロリスト。国ではないから戦線布告は必要ない。無限戦争ができます。フランク・ランスの調査では、全員が「ウォー」という言葉に「心地いい」という回答を出しました。「今こそ『ウォー』という言葉を使うべきだ」というのが、フランク・ランスのブッシュへの進言でした。

何故か。それは57年間、アメリカ合衆国では「ウォー」という言葉は例えとしてだけ使われた。文学の専門用語で言うと比喩ですね。例えば、「War on Cancer・がんとの闘い」「War on Aids・エイズとの闘い」「貧困との闘い」「差別との闘い」。57年間、そういうように「ウォー」という言葉が使われていると、もうその言葉の意味ではなくてイメージが心地いい。「ウォー」と聞くと「人の命を助ける」という感じになる。

言葉の本当の意味ではなくて、無意識に近いイメージの所を操作して、国民全体をテレビというメディアを通して洗脳して煽動していく。これが今行われている政治のあり方です。そこに今回の総選挙で日本もスッポリとはまった。「さあ、ここからどう脱却するのか」というのが問題です。

世界第1位の軍事力がアメリカです。第3位がイギリスです。この世界の1位と3位が合体すれば無茶苦茶に強いですね。この軍事力を集中し、世界の富を牛耳っているのもアメリカとイギリスです。でも、この二つの国は、今のような嘘をついて国民を騙さないと戦争は出来ません。最終的には言葉の問題です。この言葉の問題をめぐる人類史的なせめぎ合いが、今、行われている。そして、そこのところに日本国憲法9条の問題が深く関わっているわけです。それは何故か。

問題の国連憲章51条の「集団的自衛権」

アメリカとしては、日米安全保障条約というアメリカと日本の二つの国の間に結ばれた軍事同盟に基づいて、日本が「集団的自衛権」を行使できるようになってもらわなければならない。そのために「9条を変えろ」と言っているわけです。

新聞でも繰り返し「集団的自衛権」という言葉が出てきますね。今回民主党の代表になった前原さんも「集団的自衛権は行使できる」と言って、自民党とほとんど変わりはない。これは一体何を問題にしているのか。ここを先ずきちんと理解しておく必要があります。問題は国連憲章の第51条です。皆さんのお手元の資料に憲法の必要な部分と教育基本法と国連憲章があります。9ページにある国連憲章第51条こそが、先ほど申し上げたアメリカ合衆国が第2次世界大戦後に「ディフェンス・自衛」という名でやり続けてきた戦争を容認した、極めて重要な問題をはらんだ条項です。

国連憲章第51条にこう書いてあるんですね。

「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」。

法律用語ですから難しいとは思いますが、簡単に言えば、国連憲章は「国と国との戦争が起きた場合、先制攻撃をしてはいけない」「武力を使ってはいけない」、ここまでは決めています。でも、その「してはいけない武力攻撃」を受けたら、「自衛のための戦争はしていいですよ」というのが国連憲章第51条です。自衛のための戦争のやり方として、一国だけで守るのが「個別的自衛権」。他の国と一緒に守るのが「集団的自衛権」。これが今、憲法9条を巡って大きな問題になっているわけです。

小学校一年生が見ても日本の自衛隊は軍隊ですが、防衛庁と自衛隊が朝鮮戦争の休戦協定のあとに作られた1954年当時、保守党の自由党と民主党はそれぞれ調査委員会を作って「果たして防衛庁と自衛隊は憲法に合致するか」を検討します。そして合致しないという結論が出ます。憲法を変えるためには国会の3分の2以上の議席が必要ですから、「衆議院で自由党と民主党を合わせると3分の2以上になる」ということで、9条を変えるために、自由民主党が1955年、今から50年前に作られるわけです。だから、創立50周年記念の大会を開く今年の11月22日に、憲法改悪の案を出す。こういうふうになっているわけです。

50年来の念願というわけですが、結党時に変えられなかったかというと、1956年、参議院でも3分の2を取ろうと初代の鳩山一郎総裁のもとで選挙に打って出ますが、3分の2は取れなかった。憲法第99条に、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」とありますね。総理大臣は憲法を一番に守らなければいけない。ですから、3分の2とれなかったから、「防衛庁と自衛隊は憲法に合致しています」と言いはじめるわけです。

これがいわゆる解釈改憲のはじまりです。当時の国会議事録を読むと、とんでもない議論がされています。野党の議員が「総理、自衛隊の装備の中には英語でタンクという車両があるではないですか。数年前まで『タンク』という車両は日本語で『戦車』と訳していたでしょう。戦車を装備に持っているんだったら自衛隊は憲法9条で禁じた戦力ではありませんか」。こう質問したら、当時の吉田茂首相こう答えたんですね。

「いえ、あの車両は『戦車』ではございません。『特車』でございます」。

「ちょっとやめてくれよ」みたいな日本語のねじ曲げを一つひとつやりながら、ずーっと解釈改憲でやってきたわけです。

アメリカのITハイテク兵器をしこたま買わされて、イージス艦を4隻も持たされて、軍事力の強さとしては、こうした兵器を持っていない中国やソ連・ロシアの軍隊よりも自衛隊は強いです。世界第2の軍事力だと言われています。けれども自衛隊は戦力ではない。陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊はありますが、それは「陸、海、空その他の戦力」ではないというのが、歴代の自民党内閣とそのあとの93年細川内閣以降の連立与党内閣の表明です。戦力ではない。だから、自衛隊は「個別的自衛権」しか持たない。つまり日本の国土が攻撃された時、国土のところでしか反撃できない。これが、歴代内閣が世界に表明してきた「専守防衛」ですね。

自衛隊は英語で言うと、「セルフ・ディフェンス・フォーシス(Self-Defense Forces)」です。だから、自由民主党は一貫して「自衛隊は自衛のために必要な最低限の実力です。戦力ではありません」と言っている。「アーミィ(Army)・軍」になると、「戦力」になるんですね。

そして自民党の8月1日の第一次草案では「自衛軍」にすると言っている。確かに「隊」を「軍」にしてもどうせ軍だからいいじゃん、みたいな話ですよね。「軍隊」というぐらいだから。でも、「自衛隊」か「自衛軍」かは決定的に違います。ここのところを何でもないかのようにごまかして通そうとしているわけですね。つまり、自由民主党としても、「現憲法では、集団的自衛権の行使は憲法違反」というのが一貫した立場なんです。

憲法9条と国連憲章

多くの人に今の憲法問題のどこがかなめかを理解していただくためには、「憲法9条が国連憲章との関係でいったいどういう意味を持っているのか」ということを、私たちが今きちんと押さえることが、とても大事です。

国連憲章が出来たのは1945年。そのわずか1年後から、「国連憲章第51条があると世界から戦争は無くなりませんよ」と警告し、メッセージを発し続けてきたのが、日本国憲法9条です。そして、「そのことが本当に見えてくる」と私が痛切に感じたのは、「九条の会」の発足記念講演会のときでした。「九条の会」は昨年の6月10日に結成のアピールを発し、7月24日に東京で発足記念講演会を開きました。その時の大江健三郎さんのお話です。大江健三郎さんはこういうことを話されました。

「憲法9条と教育基本法の前文には『希求』という耳慣れない言葉が使われている。私たちは、この法律を作った人たちがどうしてもこの『希求』という特別な言葉を使わねばならないと判断したことを、改めて重く受け止めなければならない。なぜなら、『希求』という言葉が使われている法律の文体には倫理観すら滲み出ているからだ。そして、倫理観とは、戦争で多くの死者を身近に持っている生き残った人々の、その死者の死に対する態度の取り方だ」。こういうお話をされました。そして、そのあと広島の折鶴を燃やしてしまった青年のことについて、お話をなさいました。

この4〜5年、私は教育基本法と憲法の問題について、全国でお話しさせていただいてきましたが、「希求」という言葉には注目していませんでした。そのとき、司会の席で大江さんの話を聞きながら、「やっぱりノーベル文学賞作家は目のつけ処が違う」と、文学研究者、文芸評論家としてはかなり口惜しい思いをしましたが(笑)。ま、とっても大切なお話だったので、その後は私の持ちネタとして使わせていただいております。

なぜなら、この「希求」という言葉に注目して憲法9条を読み直してみると、とても大事なことが見えてくるからです。資料の1ページに9条があります。「希求」に注目しながら読み直してみてください。

「第9条(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」、ここに出て来ます。「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。「(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」。

「誠実に希求し」という言葉を中心にして、9条1項を前半と後半に分けてみると、それは国連憲章そのものだということが分かります。前半の「正義と秩序を基調とする国際平和」は、国連憲章第1条の国連の目的です。そして「武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては」は、国連憲章第2条。国連のすべての加盟国が守らなければならない大原則です。

もう一度国連憲章に戻ってください。8ページの第1条をご覧ください。こう書かれています。「国際連合の目的は、次のとおりである。国際の平和及び安全を維持すること」。そして「平和と安全の維持」というのは具体的にどういうことかというのが書かれたあと、最後に「正義及び国際法の原則に従って実現すること」とあります。国際法というのは国連憲章そのもののことです。憲法9条の「秩序」も国連憲章ですね。だから「正義と秩序を基調とする国際平和」というのは国連の目的です。この国連の目的に賛同して、加盟した国が守らなければいけないのが国連憲章の第2条です。第2条の6行目をごらんください。こう書かれていますね。

「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」。

これが先ほど申し上げた先制攻撃の禁止を決めた条項です。国と国との紛争が起きたら、武力によって威嚇してはいけないし、武力の行使はしてはいけない。

でも、皆さんお気づきのように、国連憲章第2条と日本国憲法第9条を較べると、日本国憲法は「永久にこれを放棄する」なのに、国連憲章は「慎まなければならない」と腰が引けていますね。何故かというと、国連憲章第51条が自衛のための戦争を許しているからです。そして、日本国憲法9条は、それに対する批判だということが見えてきます。

「誠実に希求し」を中心に、日本国憲法9条を読み直してみると、国連憲章との関係でこうなります。

国連の加盟国のすべての皆さんは、正義と秩序を基調とする国際平和という国連の目的を達成するために、「国と国との紛争が起きたら武力による威嚇または武力の行使はしない」とそこまでお決めになりました。しかし、私ども日本国民は、侵略戦争に次ぐ侵略戦争を行って2000万人以上のアジアの人々の命を犠牲にした。その侵略戦争を自らやめることが出来ずに、ポツダム宣言が出ていたにも関わらず、唯一の主権者である昭和天皇裕仁はそれを認めなかった。そのことを理由に、アメリカ軍が、1945年8月6日広島に、9日長崎に、無差別大量殺戮兵器である原爆を投下した。数十万人の原爆の犠牲者と、合わせて230万人を超える自国の戦争の犠牲者の、その死を重く受け止めている私たち日本国民は、国連加盟国の全ての国々の皆さん以上に、誠実に国際平和を希求するから、私たちはあなた方が放棄してない国権の発動たる戦争を放棄するんですよ。

これが世界へのメッセージです。国権の発動たる戦争を放棄しているから、その道具である陸海空その他の戦力は持ちません。もちろん国の交戦権も認めません。これが憲法9条1項と2項の論理的な繋がりです。

よく「憲法9条は日本一国だけが平和であればいいという一国平和主義だ」と憲法9条を批判する人がいますが、間違いです。日本国憲法9条は、1946年から56年間、「国連憲章の第51条があると世界から戦争がなくなりませんよ」とずっと警告し続けています。そして、この警告が見事に的中したのが21世紀の戦争、イラク戦争ですね。イラク戦争は国連憲章第51条の拡大解釈に基づいて行われました。日本国憲法9条は、21世紀の戦争のやり方まで、いわば予言している。

ブッシュ政権からの改憲圧力

その9条を今「変えろ」と言っているのがアメリカ合衆国、とりわけブッシュ政権です。かつて、「憲法を変えよう」という人たちは、「今の憲法は、アメリカ軍に占領されていたとき銃剣で押し付けられた押し付け憲法だから変えなければいけない」と言っていましたが、最近言えなくなりましたね。あの黒い宣伝カーで、鳴り物入りでやっている人たちも。この1、2年のことを振り返ってみると、ブッシュ政権が日本に「9条を変えろ」と言っている「押し付け9条改憲」だということは、もう隠せないからです。

去年一年間を振り返ってもそうです。3月、「文芸春秋」と言う雑誌に、第1期ブッシュ政権の国務副長官で対日政策の専門家であるアーミテージという人が「日米安全保障条約にとって9条は邪魔だ」というインタビューを出しました。まあ、インタビューは相手なしに自分の思っていることだけを言うのですから、何を言ってもいいのかも知れません。しかし、7月22日、アメリカを訪問した自民党の中川国対委員長との秘密会談で、アーミテージは、「日米安保条約にとって9条は邪魔だから変えてくれ」と言ったのですね。中川国対委員長は日本に帰ってきて、「アーミテージさんから外圧をかけられた」と触れまわり、閣議でも報告しました。ここらへんは中川さんの国際常識がないところですが。

でも、憲法は最高法規でしょう。その最高法規を他所の国の政府首脳が「変えろ」というのは国連憲章で禁止された内政干渉です。だから国連でも大問題になり、国際社会でも大問題になって、アーミテージ国務副長官はこの発言を撤回せざるを得なくなったのです。

しかし、この部下であるアーミテージ国務副長官の失敗に懲りずに、上司にあたるコリン・パウエル国務長官は矛先を変えて、8月12日に、「もし日本が国連の安全保障理事会の常任理事国に入りたければ、9条は変えなければならないのではないか」と言ってきました。国連の安保理の常任理事国入りを餌にしたわけです。日本政府は、多分何十億という予算をかけて国連の代表団に接待攻勢をかけて常任理事国入りを果たそうとしましたが、ほぼ駄目です。アメリカに裏切られていますから。それで矛先を変えてやってきた。

今の私のギャグ、お一人にも伝わりませんでしたね。わざわざ私は「部下であるアーミテージの失敗に懲りずに」と言って。コリン・パウエルと言って(笑)。今更笑われても嬉しくない(笑)。寒いオヤジギャグを自分で説明するほど日本近代文学研究者にとって屈辱的なことはない(笑)。全てはこの言葉の微妙なところで操作されています。今日、皆さんが、その能力をお持ちいただいてお帰りになっていただけるかどうか。運動の成否がここにかかっているわけですね。一言も聞き漏らさないように、ぜひ集中力を高めていただきたいと思います。

イラク攻撃で行使された「米英二国間同盟に基づく集団的自衛権」

ブッシュ政権ははっきり改憲を求めている。それは何故かということです。それは二国間軍事同盟に基づく集団的自衛権の行使、これが21世紀の戦争のやり方、戦争のからくりだからです。イラク戦争もそうでした。
これからの話は、皆さんの頭の中で世界地図ないしは地球儀を思い浮かべて聞いていただかなければならないのですが。正直に手を挙げてください。自分は地理は苦手だという方。数人ですね。廿日市は国際的だ(笑)。今更挙げても遅いですよ(笑)。

2003年3月20日、アメリカとイギリスは二国間軍事同盟に基づいてイラクを攻撃しました。私たち常識ある市民から見れば、国連憲章第2条で禁じられている専制攻撃です。でも専制攻撃をすれば、湾岸戦争のときのイラクのように、直ちに国連から軍事的にも経済的にも制裁を受けるはずです。フセイン政権が倒れるまで経済制裁は続いていました。それなのに何故アメリカとイギリスは野放しだったのでしょうか。

アメリカとイギリスは、「イラクは大量破壊兵器を持っている」ことをイラク攻撃の理由にしました。国連憲章第51条の拡大解釈に利用するためにです。イラクには2003年3月20日まで徹底した査察がかけられていました。最初は「核兵器を持っているのでは?」と。しかし、今度ノーベル平和賞をもらったエルバラダイさんをはじめとする国連の原子力委員会が調査し、核兵器を持っていないことがはっきりしました。けれどもイラクの持っている通常ミサイルの弾頭に生物学兵器や化学兵器を搭載したら大量破壊兵器になる。アメリカとイギリスは生物学兵器や化学兵器をイラクは持っていると主張しました。国連の査察団は確証がないと言いました。けれどもアメリカとイギリスは攻撃に踏み切った。それが2003年3月20日でした。

イラクは通常ミサイルしか持っていません。アメリカ一国では絶対にイラク攻撃は出来ませんでした。これが世界地図の問題です。

アメリカ合衆国はどこにあるか。アメリカ大陸は日本の裏側にありますね。北アメリカ大陸と南アメリカ大陸があって、北アメリカ大陸の真ん中がアメリカ合衆国です。北がカナダ、南がメキシコ。それで、ニューヨークやワシントンやボストンがある東海岸からアトランティック・オーシャン(大西洋)を渡ると、まずイギリスに着きますね。ヨーロッパの北西に浮かんでいる島国です。ドーバー海峡を渡るとフランスです。フランスを南下するとスペインです。スペインを南下すると北アフリカ大陸のアルジェリアあたりに着きます。今までが思い浮かばなかった方。大丈夫ですね。あ、一人いらっしゃる(笑)。では無理やり思い浮かべてください。アフリカの北のアルジェリアからアジア大陸のほうに行くと、アフリカ大陸のはじっこがエジプトです。そして中東に入ります。エジプトのほぼ隣に、1948年にアメリカとイギリスだけが認めた、パレスチナの人々の土地を奪ってユダヤ人移民を移民させた、イスラエルという小さな国があります。その東がイラクです。その東がイランです。その東がアフガニスタンとパキスタンです。その東がインドです。インドの東がミャンマーです。ミャンマーの東がタイ。タイの東がカンボジア。カンボジアの東がラオス。その東がベトナム。その東が中華人民共和国。だーっと大陸を横断すると朝鮮半島で北朝鮮と韓国。海峡を渡ると日本。日本の太平洋岸からずーっと太平洋(パシフィック・オーシャン)を渡って行くと、ハワイを通ってアメリカの西海岸に着きます。アメリカの西海岸の一番南側のサンディエゴという港がアメリカ太平洋艦隊の出撃基地です。地球を一周しましたが途中で落ちこぼれた方は(笑)。大丈夫ですね。はい。これをそのまま最後までキープし続けてください。45分に話終わりますからね。

イラクは通常ミサイルしか持っていないのです。地球上で起こることは何事も重力の法則に従いますが、ミサイルは地上から打ち上げると放物線を描いて、その一番高い所で弾頭を切り離して攻撃をする。これが弾道ミサイルの攻撃の仕方です。通常ミサイルはあまり高く上げずに近場を狙うミサイルです。遠いところを狙う特別のミサイルは「大陸間弾道ミサイル」といいます。大陸間だから、アメリカ大陸からヨーロッパ大陸、アメリカ大陸からアフリカ大陸、アメリカ大陸からアジア大陸というように、オーシャンを越えなければいけない。高く打ち上げなければいけませんね。だから、大陸間弾道ミサイルというのは、いったん宇宙空間まで打ち上げて、そこで弾頭を切り離して、コンピューター操作で目的のところに攻撃をかけるというミサイルです。

そういうミサイルを打ち上げられるのは1960年代から宇宙開発に成功しているアメリカか、旧ソ連・ロシアしかありません。あるいはその技術供与を受けているところです。日本みたいに気象衛星一発打ち上げるのにも何度も失敗して、目の前で花火のように国民の税金数億がバーッと消えてくような種子島系技術では、大陸間弾道ミサイルは打ち上げられないわけです。

イラクは通常ミサイルですから、大西洋を越えてアメリカ攻撃は出来ない。アメリカ本土を攻撃できるのは、9・11型の、乗り物である旅客機を爆弾に変えるというのしかないわけです。だからイギリスを巻き込みました。イギリスはイラクの近場です。かつてのイラク植民地宗主国で、通常ミサイルで30〜40分で着きます。それでどうしたかと言うと、こういうことにしました。

「イギリスがイラクから大量破壊兵器によって攻撃されることが予測される事態を、国連憲章第51条の武力攻撃が発生した場合と同じだとみなす、みなし武力攻撃事態で、アメリカとイギリスの二国間軍事同盟に基づく集団的自衛権を行使します」。

それがイラク攻撃です。イラクはそのとき大量破壊兵器を持っていなかったということが、アメリカやイギリスの議会の調査ではっきりした段階で、アナン事務総長が「今回のアメリカとイギリスによるイラク攻撃は国連憲章違反、国際法違反だ」という演説をしたのもそのためです。

でも、もうイラクは泥沼で、アメリカ軍とイギリス軍は撤退するわけにはいかない。アメリカとイギリスに制裁をかけるわけにはいかない。「もう仕方がない」という形で、今の泥沼状態になっているわけですね。

アメリカが欲しかった「武力攻撃事態法」

皆さんどこかで聞いたことはありませんか。「武力攻撃が予測される事態でも、それは武力攻撃事態だ」。

同じ2003年、この国の国会を通過させられた、マスメディアが「有事法制」と言って問題の本質を押し隠して報道した、あの法律ですよ。ちゃんと「武力攻撃事態法」という名前がついていて、国会でも議論のかなめは「武力攻撃が予測される事態でも武力攻撃事態だ」というわけの分からない話でしたね。あれがアメリカは欲しかったのです。

繰り返し言いますが、多分、言葉の問題ですね。私は、専門は憲法でも教育法でもありません。日本近代文学研究者です。でも言葉の専門家です。だから、あのときも国立大学法人法に全力で反対しながら、「武力攻撃事態法と言わないと今のアメリカの狙いを押し隠される」と言い続けましたが、孤立しました。「小森さん、もう今さら武力攻撃事態法って言っても分からないよ。マスメディアはみんな有事法制と言っているのだから」。

その時に負けると思いましたね。だって「武力攻撃事態法」という名前のついた法案を国会で議論しているのに、それを話題にするときだけ「有事法制」なんですから。それで「備えあれば憂いなし」とかいう小泉のキャプションが通っちゃうんですよ。

自衛隊がずーっと欲しかったいわゆる「有事法制」と、アメリカが日本を戦争に巻き込むために準備した「武力攻撃事態法」というのは全く別物です。アメリカは「武力攻撃が予測される事態でも武力攻撃事態」という国連憲章第51条を拡大解釈するための道具が欲しかったんです。そこのところは記録されずに、反対勢力も「有事法制反対」とか言っていましたね。ことのかなめは「武力攻撃が予測される事態でも武力攻撃事態」。もうこの法律通ってしまいました。今、関連十法が施行されているんです。

どうしてアメリカが欲しかったのかお分かりでしょう。アメリカが2002年から煽り立てた北朝鮮核開発疑惑。何のためか。北朝鮮のテポドン・ノドンは通常ミサイルですから、アメリカ本土には届きません。届くという軍事評論家もいますが、それはアラスカです。アラスカをテポドンを打ってどうするんですか。鮭でもミサイルで獲るんですか。

アメリカが観測している北朝鮮ミサイルがちょっと角度を変えた。そのとき日本の憲法9条が改悪されていれば、自衛隊が自衛軍になっていれば、「日本が北朝鮮から武力攻撃されることは予測される事態だ」「それは武力攻撃が発生した場合と同じだ」と判断して、アメリカ軍が全面的にこのユーラシア大陸の東側に展開できるんです。

なぜ、今、2002年以降、日本が狙われているかというと、そういうことをやれていた韓国がアメリカの言うことを聞かなくなったからです。アメリカが韓国をIMF体制で牛耳っていたなか、民衆・市民たちの、本当に自分たちの命を懸けた民主化運動を通して、韓国に金大中政権が登場したのは1998年です。そして北朝鮮への敵対政策はやめて、イソップの「太陽と北風」という物語をベースにして、「軍事力と言う北風で脅すのではなくて、経済援助という太陽の光をポカポカあてて、北朝鮮の厚いコートを脱がすんだ」という太陽政策に切り替えて、2000年、劇的な南北首脳会談を成功させて、もう朝鮮半島には戦争は起こらないという宣言をあげたわけです。この姿勢は、どんなにアメリカから圧力がかかっても変わっていません。韓国の人たちは、誰も北朝鮮が攻めてくると思っていませんよ。

国境を隔てている人たちが「大丈夫」と言っているのに、何故、海峡を隔てた我々がびびる必要があるんですか。核開発疑惑が書きたてられていますが、日本を攻撃するために核開発は必要ないでしょう。日本の北朝鮮側は全部原発街道ですから、ちょっとしたミサイル一発打ちこめばいいわけです。でも北朝鮮はそんなことはしません。経済制裁を言って北朝鮮を悪者に仕立てあげている安部晋三さんたちは、「アサリを買っちゃいけない」と言っているでしょう。あの海の魚介類は最大の外貨獲得の手段なんですから、そこを放射能汚染させる訳がない。チェルノブイリの経験から言って、日本の原発が爆発したら朝鮮半島全部汚染ですよ。そんな馬鹿げたことをやるわけはないです。

一体どうしてテポドンやノドンの恐怖に怯えているんですか。こういう話はそれを言っているご本人に考えていただくのが一番です。こっちが説得するのではなくて、「考えてみて」と言って。大体皆さん、今の結論になります。

そうやって、2002年から、北朝鮮の核開発疑惑やら拉致家族問題で日本をずーっと煽り立てて、北朝鮮に対する反発の問題で9条を変えさせようとしているわけですね。何故かと言うことです。

21世紀のエネルギー事情とアメリカの世界戦略

20世紀の後半は、世界のエネルギーの一番のかなめは中東でした。だからアメリカとイギリスはイスラエルを作りました。アメリカとイギリスの最大の献金頭であり公共事業の総本山である石油エネルギー産業は、中東に出張っているわけです。財産は外に出ているわけです。この外の財産を守るために、いつでも軍隊が派遣できるようにするために、アメリカとイスラエル、イギリスとイスラエルは二国間同盟を結んで、いつでも集団的自衛権を行使できるようにしたわけですね。

国連憲章第2条には、領土がなくなる時も軍事力を使ってはいけないと書いてあります。イギリスは戦勝国ですが、植民地を手放しませんでした。イギリスの植民地のエジプトが独立するというとき、エジプトが「アラブの人の土地を取ったイスラエルは許せん」と国と国との紛争になったんです。この時に、イギリスとアメリカが軍事的にバックアップして、出来たばかりの小さなイスラエルがあの大きなエジプトに勝っちゃったのが、第1次中東戦争です。そうやって中東戦争は第何次まで起きましたか。つまり、あの中東がイスラエルを軸に常に戦火の危機に置かれていなければ、アメリカとイギリスは自分たちの稼ぎ頭である石油エネルギー産業を軍事的に守れないんです。

同じ事態は、今、日本にあります。バブル以降、日本人を使うと給料が高い。日本に生産拠点を置いておくと税金を取られる。二重の意味で日本に金を落としたくないという、日本のトヨタをはじめとする製造業はみんな外国に出ました。「財産が外国に出ているから、それをどうやって守るの」ということで、トヨタの奥田を会長とする経団連は自衛隊の海外派兵を本務にしたいわけですよ。

あいつら日本の企業じゃないですよ。名前がトヨタなだけでね。外で勝手に儲けている。外で勝手に金儲けしている人たちの安全を守るために9条を変えるんですか。そういうことなんです。そこが問われている。

今、石油が高値で値止まりして、運送業とか営んでいる方は大変なんだろうと思います。でも何故こういう事態になっているのかというと、中東の石油が大体あと60年ぐらいで終わります。それで次のエネルギーの大動脈が今ゆらいでいるんです。次のエネルギーの大動脈がどこかというと、世界地図、まだ頭の中にありますか。ユーラシア大陸の真ん中の西側、旧ソ連領だったカスピ海沿岸からアフガニスタンを通ってパキスタンを通ると、インド洋に出ます。カスピ海沿岸には莫大な天然ガスと石油が埋まっています。旧ソ連領でしたが、カスピ海は閉じた海ですからタンカーで運び出すことは出来ない。山岳地帯ですからタンクローリーで運び出すとやたらにコストがかかります。だから、重力の法則に従って、旧ソ連地帯は北側には全部パイプラインで天然ガスと石油が運び出されていました。ソ連が東ヨーロッパを支配できたのも、このパイプラインで天然ガスと石油を送っていますから、「言うことを聞かないとエネルギーをストップする」とね。これがまあ、支配の原理なんですが。でもソ連は崩壊しました。カスピ海沿岸のウズベキスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、こういう国々はみんな独立して、この石油エネルギーで勝負していくというふうになりました。

南へのパイプラインです。アフガニスタンを通ってパキスタンを通ったこの新しい21世紀のエネルギーの動脈を手に入れたのが、アメリカの第9位の石油エネルギー産業ユノカル社という会社です。今アフガニスタンの代表をしているカルザイという人、いつも民族衣装を着てアフガニスタンの代表のように出て来ますが、違います。アフガニスタンに送り込まれる前にカルザイさんが何をやっていたかというと、このユノカル社の最高経営顧問をしていたんです。

アフガン戦争は、アメリカがこの大動脈を押さえるための戦争に他なりません。だからビン・ラディンはいつもアフガニスタンとパキスタンの国境に居なければならない。パキスタンは「いつかはビン・ラディンを差し出しますよ」ということで、何をやっても許されている。ロンドンのテロも、犯人はパキスタンで学習して入ったということがはっきり言われています。イランや北朝鮮の核開発の問題は大騒ぎしているのに、パキスタンは核を持っていてもアメリカに許されている。ここがかなめです。

でも会社と言うのは買われてしまうんです。すでに、みなさんホリエモン騒動を体験してお分かりのとおりです。今阪神が大変でしょう。広島の人は「ざまあみろ」とか思っているかも知れませんが(笑)。それはそれとして。

ユノカル社を中国の石油企業が、「買う」と言い出したんです。今、中国は石油が大ピンチですから、世界で一番高い1株あたりの値段を提示しています。でもここを取られたら大変というんで、アメリカの議会も政府も、株価は安いのに「シェンロンというアメリカの会社に身売りしろ」と圧力をかけています。このエネルギーの動脈をめぐって、今は中国とアメリカが全面戦争になっています。それにロシアが当然からんでいる。アメリカが中国とロシアをどう抑えるかという問題なんです。

アフガニスタンのように貧しい国、イラクのように国連の査察で丸腰にされた国は、日本の国民の税金で動いているアメリカ太平洋艦隊の艦隻から飛び立った空爆で抑えられます。でもパキスタンとインドは、ずーっとカシミール問題で対決している。両方とも核兵器を持っている。地下基地に隠されている。こんなところは空爆で抑えられないでしょう。危なくて仕様がない。

アメリカ軍の再編計画と9条改悪

だから、アメリカ軍の再編計画が行われているわけですね。どういうことか。こういう危ない地域は陸軍がちゃんと上陸して、地元の政治家やジャーナリズムやメディアをきちんと操作できるような特別な能力を持った連中が常に介在して、抑えていかなくてはいけない。かつての南ベトナムや朴全熙(パクチョンヒ)時代の韓国の支配の仕方ですね。

アメリカの西海岸にあるワシントン州。ワシントンという町ではなくて、西海岸の一番北にあるワシントン州です。ここにはアメリカの陸軍第一師団があります。何故ここにあるかというと、ソ連に睨みをきかせるためです。でももう必要なくなった。だから、陸軍第一師団の司令部を日本の神奈川県の座間に持ってくるというのが、アメリカの今の再編計画なんです。

陸軍第一師団というのは、かつてベトナムで「グリーンベレー」と言われた、一人が一個中隊分の働きをするという特殊部隊です。ということは、日本をアメリカの世界戦略のための最前線基地にするという狙いです。しかも陸軍の基地を持ってきて、空軍の基地はグアムに撤退する。それは「日本はもはやどこからも攻撃されることはない」とアメリカ軍が判断しているということです。空軍基地というのは、向こうにやられそうになったとき、先制反撃するためのものですから。

何故か。それは、これから最も石油を使うのはインド洋だからです。今は中国が最前線ですが、労働力が買い叩かれていると分かってきて反日デモが起こっていますね。それに豊かになって給料もせびるだろう。じゃあ今度はベトナム。インドには優秀な技術者・コンピューター技術者がたくさんいる。ここが儲けどころになるんですよ。それで、日本の企業も行っているだろうと。

もう米軍はイラクで1900人以上死んでいます。厭戦気分です。ルイジアナ州のニューオリンズでカトリーナ台風が来たとき、貧しい人たちが放置されて何の援助も受けられなかったのは、兵隊が足りなくてルイジアナ州の州兵の3分の2がイラクに送り込まれていたからです。「戦争をしている国は自国の国民の命を守れない」ということを証明してしまったんです。ものすごくブッシュの支持率は下落しています。イラクはどうなるか分かりません。泥沼状態で続きます。アメリカがやったんだから撤退するわけにいかない。

それなら、ここを押さえるためにはアメリカ正規軍でなくていい。そしてアメリカ正規軍の部隊は大量に日本に置いておけば、戦費はただです。日本がアメリカ軍の兵士だけでなく、その家族の光熱費その他全部を私たちの税金でまかなっている。年間2500億円以上の、その名も「思いやり予算」です。私は一度もアメリカ軍なんて思いやったことがないのに、勝手に使われているわけですね。

つまり、「アメリカの世界戦略のための戦争を、日本のお金と日本の若者の命でやれ」。これが、アメリカが要求してきている9条改悪です。「そんなことのために9条を変えていいんですか」ということが、今問われている最大の問題です。

憲法9条が守っている東アジアの平和

ユーラシア大陸の西側がずーっと戦争が絶えなかったのに対して、東側はどうでしょう。同じ悪の枢軸の北朝鮮の核開発問題について6カ国協議という多国間の平和的な外交交渉の枠組みで、ちゃんと共同声明まで出せました。その違いは一体どこにあるのか。それは日本が憲法9条を持っているからです。日本や韓国を巻き込んで「二国間軍事同盟に基づく集団的自衛権」をアメリカが行使できないから、きちんとした平和的な外交交渉でアメリカも譲歩せざるを得ないんです。6カ国協議で6つの国が合わされば、勝手なことはそれぞれ出来なくなります。

つまり、今、日本国憲法は、このユーラシア大陸の東側に戦争を起こさせないでいるんです。日本一国の平和と安全だけではなくて、ロシアの平和も、中国の平和も、韓国の平和も、北朝鮮の平和もしっかり守っているんです。今、刻一刻、この瞬間も、平和を守っているのが日本国憲法9条の現実性なんです。
憲法9条は理想だという人がいますが、とんでもありません。わずか数行の言葉で、世界第2の軍事力を封印し続け、世界第1の軍事力がこの地域に介入することを抑え続けている。こんなに現実的な言葉が一体世界のどこにあるでしょうか。

その憲法9条が、その憲法を生み出したその国で、息の根を止められようとしている。私はもう52歳ですが、一度も国の命令で人殺しを命じられたこともないし、そのために命を狙われたこともありません。私には二人の子どもがいますが、その二人の子どもにその同じ社会を残すのが親としての最大の責任だと素直に思っています。この大事な憲法9条が、今、息の根を止められようとしているのなら、これまでお世話になってきた私たちが、そろそろ9条のために体を張ってもいいんじゃないですか。これが「9条の会」の呼びかけなんです。

「9条の会」が出来たとき、サンデー毎日は「平均年齢76歳」とキャプションを付けました。自然の原理に従って今年は77歳です。7月22日、「二年目どうするか」という話をしたら、哲学者の鶴見俊介さん。こうやって腕組みをしながら「いやあ、ぼくはねえ。一年で誰か一人は死ぬと思ったからなあ。大丈夫だったなあ」とこうおっしゃいました。

あの9人は「9条」を選び直し、それを生かし続ける運動に文字通り命を懸け、体を張っています。その運動に、どうかこの廿日市の力を、熱い、強い、確かな連帯をお願いして話を終わります。ありがとうございました。

(文責:九条の会・はつかいち)


結成集会講演記録

森滝春子さん (核兵器廃絶をめざすヒロシマの会・共同代表) 

「広島の思いを語る」


平和憲法は広島の砦

皆様、こんにちは、こんなにたくさん集まってらっしゃるということで、胸をあつくしております。廿日市は私にも非常にご縁が深い所でして、かって学校に、ここの七尾中学や廿日市中学に長く勤めさせていただきました。自転車でずっと通勤しておりまして、今日もそれを今でも出来ると思って来たんですが、実はちょっと2倍、時間がかかってしまいまして、今でもまだ汗が出て胸がときどきしてるというぐらい年をとってしまったんだなと思います。

しかし、こういった会の立ち上げが今、全国で、小森先生たち大江さんたちが、九条の会を立ち上げてくださったその決意のおかげで、全国津々浦々にひろがりを見せているということは、一方でまったく危機的な状況にはあるなかで、私たちは希望を持てる状態だなというふうに今日も改めて思っております。

今日は憲法問題そのものにつきましては小森先生に詳しく専門的な立場からお話しをいただくと思います。ですから私は今日、私自身がこの数年関わってきたり、感じていること

をあれこれお話しできたらなというふうに思っております。

憲法についても昨日自民党の案の骨子というのが出て、みなさんもすでにご覧になっていると思いますけれども、予想した以上に、ひどいもので、これがこの時代、戦後60年経ったこの時期に出てくるのかというような、ほんとに常軌を逸した内容としか思えない内容で出されております。これはほんとにみなさん同じ思いを抱かれたと思うんですけれども。

ただその常軌を逸したものであると言っても、先ほども山下市長のお話にもありましたように、その政権を再び継続し、さらに強固な基盤を持って、自信に満ちて独裁的に今からの政策をすべての面で進めていこうとしている小泉政権が、来年に向けて国民投票法案というものを着々と用意している現状を考えますと、ほんとに背筋が寒くなるほどの深刻なものだというふうに思っています。

というのは、私たちは広島に今生きているわけですが、当然のようにこの平和憲法、9条を中心にした平和憲法を砦として、被爆後、広島・長崎の原爆投下後、次の核戦争というものを押しとどめてきた、それはやはり日本の、広島の多くの被爆者の方々、先達たちが、本当に命を削って努力されてこられ、そしてそれを私たちが、そういった心を受けて一生懸命、平和を、核兵器廃絶を求め世界平和を求めて頑張ってきた。だから核戦争そのものは起こさせていないということがあります。

世界の規範である平和憲法

その多くの多大な犠牲の上に成り立っている、私たちが勝ち得たこの九条、日本国憲法、いわゆる平和憲法というのは、すでに私たち日本の国民のものだけではなく世界のひとつの規範となっている。ということはすでにハーグの国際司法裁判所においても、日本国憲法というものが世界の規範となるべきだと、そのことも触れられておりますし、私たちが事実、これを拠り所にいままで頑張ってくることが出来た。そして日本が戦争で人を殺すことがなく、戦争で人を殺されることがないという状態をなんとか保ってきたというふうに思っています。

9・11からアフガニスタン攻撃へ

今のイラク戦争などの情況を考えてみますと、アメリカに2001年の9・11といわれる世界貿易センターへの攻撃があり、そこが一つの転換点だというふうに言われておりますけど、アメリカは1990年の冷戦終結後もずっと、核兵器の開発をすすめ、あるいは世界でいろいろな紛争に介入し、戦争政策をやめることはなかったというふうに思います。

しかし、この9・11が大きな節目となって、一目散にアメリカは一国大国主義と言われる強権主義というものを発揮して、実際に9・11の1ヶ月後の10月8日にはもう、ちょうど今日ですね、アフガニスタンへの攻撃を開始し、テロとの闘い、報復攻撃ということで一気に今日まで進んで来ていると思います。

私はちょうど、2001年10月8日にインドからパキスタンに渡ろうとしていました。

それは、1998年にインド、パキスタンが相次いで核保有国となり、実際に核戦争を起こすのではないかという危機感から、その後何度か、広島から核戦争の実態というものを訴えに行くようになりましたけれども、そのちょうど2001年10月にも、インドで活動しており、ちょうど10月8日にパキスタンに渡ろうという計画で行動していたんですけれども、その日にアメリカのアフガニスタンへの攻撃が開始され、そしてイスラムの国であるにもかかわらずパキスタンはアメリカの前線基地にさせられたわけですね。それでパキスタンでは内乱が起こる可能性があり非常に危険なので来ないようにという連絡を現地から受けて、その年はパキスタンに渡ることを断念せざるを得なかったので、10月8日というのは非常に記憶に残る日になりましたけれども。

その、1ヶ月もせずしてアメリカがそういう行動をとるというのは、あたかも予定された行動であったかのような、そこから一気に、テロとの闘いの味方につくのか、あるいはテロの側につくのかという二者択一を迫って世界の国々を巻き込んで行ったのがアフガニスタンへの攻撃であったわけです。
私たちが日々、あまりにもいろんなことがありすぎるために、私たちの記憶の中から、ともすれば消し去られがちなことだと思うんですが、今でもアフガニスタンの罪のない人々の上に、アメリカはいわゆるアルカイダといったテロ組織を殲滅するという名のもとに、ずっと攻撃を続けており多くのアフガニスタンの人々を殺してきている。そういったことはほとんど報道されていないわけですけれども事実です。

核兵器使用の可能性を宣言、そしてイラク攻撃

そしてさらにそれだけではなくて、アメリカ・ブッシュ政権は9・11の翌2002年始めには、「新しい核態勢の見直し」という政策を打ち出し、実際に7つの国名を挙げ、我が国とって脅威を与えるており先制攻撃をする権利がある。そしてその先制攻撃の中では核兵器の使用も有り得るんだということを宣言しました。

そして私たちは非常に危機感を持って、そういった核政策を出したアメリカに直ちに広島から反核平和使節団を組織してキャンペーンを張ったわけですが。

しかしその後アメリカはイラクに先制攻撃を強行してしまったのです。結果として何の名分もないことが明らかになってしまった、大量破壊兵器や核兵器の開発の事実もない、これは昨日ノーベル平和賞受けた国連の原子力機関が、エルバラダイ事務局長等がすでにイラク開戦の前に明らかにしていたにも関わらず、アメリカは核兵器開発、大量破壊兵器の保有といったことをあるいはテロ組織アルカイダとフセイン政権の関係をあたかも事実であるかのように強弁しながら、世界中の私たちの声を無視して、イラクへの戦争を始めてしまいました。

イラク侵略とヒロシマ・ナガサキ

私たちの日本そのものはこの平和憲法のおかげといいますか、侵略戦争で亡くなっていった何百万のアジア地域の人々、日本の若者達の命も含むそれだけの犠牲の上に、そして決定的には広島・長崎の数十万の人たちの命を犠牲にして、さらにそれだけでなく、原爆というのはご承知のように放射能被害という特徴を持っていることから、ずっと戦後の60年間、どれだけ多くの被爆者の人たちを心身ともに痛めつけてきたか、そういったことが私たちにはあるわけですけれども、しかし平和憲法というものによって、他の国に再び侵略戦争をしかけたり、戦争で人を殺すことはしていない。

しかし今、私自身もみなさんもおそらくそうだと思いますが毎日心配しています。サマワに自衛隊が派兵されているからです。いつなんどき、日本の若者たちが、銃を持ってイラクの人たちを殺すはめになるかもわからないわけです。彼らももちろん殺される可能性があるわけです。

それだけではありません。戦争がもたらしている大きな悲惨さというのは、ヒロシマ・ナガサキにおける原爆使用における放射能被害とおなじことを、アフガニスタンそしてイラクの人々、それだけではありません、もちろんコソボでもユーゴでも、いわゆるバルカン戦争においても劣化ウラン弾というものがたくさん使われ悲惨な事態を引き起こしています。湾岸戦争以後ですね、世界各地の戦争で使われた放射能兵器としか言いようのない劣化ウラン弾がもたらしている事実、悲惨な実態というふうなものを私たちは忘れてはならないと思います。そういった一見、私たちが平和に過ごしている中でも、毎日アフガニスタンでも、イラクでも多くの人々が理由もなく殺され続けているわけです。

イラクの現状と劣化ウラン弾

アメリカは2003年3月20日にイラク開戦をして、その後1ヶ月ちょっと、5月2日で終結宣言、勝利宣言をしたわけです。しかしその後の状態のほうがはるかに、今のイラクの状態はご存知のようにさらに危険になっています。

これは今ほとんど、フリーのジャーナリストもイラクに入れないほどになり、そのフリーのジャーナリストの人たちは、たとえば私が戦争終結直後の2003年6月にイラクに行った時に一緒に行動した写真家の豊田直巳さんは、戦争中にさえイラクに留まってその戦争の情況を伝え続けてきたジャーナリストですが、今は入れないんですね。

それぐらい今のイラクというものは危険に満ちており、しかし、イラクの人たちは、そこから逃れることができずに暮らしている。で、毎日どういったことに巻き込まれて命を奪われざるを得ないかも知れない状態の中にある。

それだけではないですね。目に見えない恐怖である放射能に、劣化ウラン弾によってばら撒かれた放射線の危険に晒されて暮らしている。そして子どもたちは、湾岸戦争以降引き起こされている放射能による被害によって何千人も毎月亡くなっていっている。

さらに今回の戦争で、湾岸戦争時を数倍上回るといわれる劣化ウラン弾を全国に撒き散らされてしまったイラクの実態というものを私たちは他所のこととして見過ごしてしまうわけにはいかない。そこにまた、日本の若者である自衛隊が派兵されてしまっているということなんですね。

そういったことを考えると日本国憲法は果たして守られている現状であるのかということだと思います。これは明らかに、現実的には踏みつけられ、憲法違反の数々を日本政府、特に今の小泉政権が犯しているというふうに言わざるを得ないと思います。

正念場の憲法改悪

それは12月に期限の切れるイラク特措法を延長しさらにあらたな自衛隊をこの11月にも派兵しようとしていますし、次々となし崩し的に一年延長、一年延長という形で来ました。さらにアフガニスタンへのいわゆるテロ特措法による、インド洋における米英軍への燃料等の補充、そういったことをずっとし続けてきて、もうすでに国会に提出しております。

選挙前には小泉首相が何と言ったか、私は覚えているんですけれども、そのイラクへの派兵を続けたいばかりにアフガンへのテロ特措法に基く、その戦艦はいったん11月で期限が切れるため止めようと言ってました。そのかわりアメリカとの関係でイラクへの派兵を、さっきおっしゃったように次々と各国が撤退する中でも、日本は最後までアメリカとともに残るという決意を示すということを言ってました。

しかし選挙で大勝利した、その瞬間からテロ特措法も、つまりアフガンへの継続もイラクへの継続も続けようというふうに居直っています。で、この勢いで来年国民投票法を提案しようとしている、しかも自民党が出そうとしている国民投票案というのは危険な内容だというふうに思います。

まあこの辺の詳しい話は小森先生がしてくださると思いますけれども。一括で投票してしまうと明らかに危なく、先ほど山下さんもおっしゃいましたように、9条改悪には多くの国民が反対してる、しかし一括での投票ということになると、それは今回の選挙で示されたように、日本国民の今この現状ですから非常に危険なものがあります。

そうすると憲法改悪というものは来年にも現実のものとなってくるという、私たちはまさにほんとに正念場に立たされているというふうに思うんですね。わたしは小森先生に譲る譲ると言いながらちょっと憲法のことを話しすぎているんですけれども・・・。

ヒロシマと重なるイラクの悲惨

私が今関わっているイラク戦争、劣化ウラン弾の問題についてお話ししたいと思うんですけれども、私が実際に戦争の実態というものを、この身で感じ体験したのは、この年になって、イラクに行って初めてだったんですね。もちろん私は戦前の生まれですから、被爆者ではありませんけど、被爆の体験は追体験的にまわりの多くの人々から学ぶことによって体験しています。それでもちろん自分の幼児時代に見た被爆後の瓦礫の街、私が泳いでいた川で被曝死したであろう赤ちゃんのお骨を拾ったという子ども時代の忘れられない記憶もある、そういった広島で育って来たわけですが。しかし実際に戦争がまさにその場で破壊し、人間を傷つけている。家々をすべて破壊しつくし人々が亡くなっていっている状況というのを見たのはイラクで初めてだったです。

で、イラクには2度行きましが最初は戦争直前ですね。今にアメリカが、世界中のどんなに大きな反対の声も無視して、そのエルバラダイ事務局長などの大量破壊兵器はない、もっと査察を続けるべきだ、核開発はしてないという声もある。そういった中でもアメリカが何がなんでも戦争を始めようとしていた2002年の12月にイラクに行きました。

それは、湾岸戦争後引き起こされているという劣化ウラン弾の放射能被害というものをこの目で見なくてはならないという思いと、もし新たなイラク戦争が起こったら劣化ウラン弾は必ずや再び使われるであろうことを思い、現状を見てそれを報告することによって戦争を阻止することの力に、少しでも力になりたいと思って行ったわけです。

その時見たのは、多くの病院を回ったときに見たのは、多くの子どもたちが白血病そのほかのがんで、湾岸戦争後の経済制裁によってほんとに乏しい医薬品、医療設備のもとで苦しんでいる。

そして医師達が救えるものも救えないと訴え、ちょうど私が行った2002年の6・7・8月の統計によると、毎月、15歳以下の子どもたち6000人から7500人が亡くなっている。その殆どが白血病です。そういった訴えをじかに病院の人たちに聞くことになったわけですね。

遺伝子を傷つける劣化ウラン

劣化ウラン弾は爆発時に放射能が微粒子状になって空中に飛散し、これが人体に吸い込まれたり、土壌や水、大気に残留するので半減期45億年の劣化ウランは半永久的に環境を放射能汚染するものです。人体内部に取り込まれると、癌や白血病を引き起こすだけでなく遺伝子を傷つけることから、深刻な先天性の障害などを引き起こします。湾岸戦争の影響でおきている、白血病などによる病死の実態は、今回の戦争での湾岸戦争をはるかに超える大量使用、それも都市部での劣化ウラン兵器の使用が引き起こす今後の状況は想像するのも怖いものです。
 病院で起っている今の実態は、本当に大変な状況の中で過ごしていて、医師がベットが満杯で大変なんだと言うのに空いたベットがあるので「ここには二つ空いてますが」というと、「さっき亡くなったばかりだから、毎日一つのフロアで二人ぐらいは死んでゆくんだ」というふうな状況でした。

経済制裁とはどういうことか

今、北朝鮮に、またちょっと話が飛びますが、北朝鮮に経済制裁をという声が非常に強いですね。しかし、経済制裁がもたらすものが何であるかということも、その時イラクに行った時に目の当たりにしました。それは国の経済破綻です。経済破綻がもたらすものが一番現われるものは医療、教育、国民の生活の破壊ですね。国民の食生活も直撃するわけです。イラクで起こっていた湾岸戦争後の経済制裁の実態というものは本当に悲惨で、薬がない、そのために救えるものが救えない、そして学校には何の設備もない。

今アメリカブッシュ大統領は開戦の理由がことごとく崩されて、今言ってるのは、ああう悪いフセインの独裁政権だから戦争で倒し、中東に民主社会を作らなくてはいけないか正当だったんだというふうに居直った発言をしています。

しかし、そのフセイン政権下では、大学まですべて無償の教育制度でしたし、病院での治療費もすべて無償だった、食料も配給チケットで最低限の保証がああったんですね。でもその生徒に配れるのは小学校で一年間にたった2本の鉛筆と一冊のノートというふうな情況です。窓ガラスもガラスが壊れても入れられない、黒板もほんとにてかてかに光って。そこに子どもたちはノートがないわけですから黒板に出て答えを書いたりします。そこが唯一、黒板が勉強、発表の場なんですけれども、その黒板がまん前に行ってみても光って見えない。そういった状況の中で勉強をしてました。

しかし本当に子どもたちは熱心に勉強してたんですね。将来の希望を聞いても、これだけ周りに病人が多いから自分は医師になりたい。中学校一年生の女子中学校に行った時の忘れられない記憶なんですが、三分の二が医師になりたいというんですね。将来の希望を。他にも教師になりたいとか、これだけイラクっていうのは世界第二の石油の貯蔵保有量のある国なのに経済制裁でまったく生かすことができない。だから自分は石油の仕事について、この石油を生かして国を豊かにしていきたいんだという生徒、中学一年生がそんな絶望的な教育環境の中でも元気よく答えていたんですが。まとわりついてくる子どもたちはほんとうに人懐っこく可愛いだけだったんですね。

劣化ウラン弾被害実体調査で見たもの

だけど戦争後、再び私は訪れることになったんですが、たった6ヶ月後だったんですね。

これはイラク戦争と劣化ウラン弾の被害の実態調査を目的として入ったんですが。2003年5月の戦争終結宣言がブッシュによって出された当時、これはすぐに調査に入らないと難しくなるだろうと。というのは占領態勢が完了してしまうととても調査するということは危ないというか、禁止されて出来なくなるでしょうし。いわゆる傀儡政権ができるとビザ等の問題があって入れない。だから今のうちにというものでしたので、戦争前に訪れたときから6ヶ月しか経ってないんですね。劣化ウラン弾の使用状況を調査するため、土壌や、水、尿などの採集をし持ち帰って専門機関で分析した結果、劣化ウラン弾が都市部で使用されたこと、白血病を患っている子供の尿から劣化ウランが検出されるなどしました。

その間にこれほどの変化が起るとは想像もしていませんでした。 目の当たりにする破壊の状況はもちろんのこと、人の心、特に子どもの心を戦争の体験がいかに破壊してしまうかということを学ばされました。戦争前に訪れたときの子どもの状態っていうのはほんとにとにかく可愛くて、次のスケジュールがあるので去ろうとしても子どもたちが離してくれない。ほんとに日本人が好きだということもあったんですけど。たった一個のサッカーボールを持っていったり、たった一連の折鶴を持っていってるだけなんですね。でも、ほんとに自分たちのために来てくれたんだという子どもの心を感じることができたんですけれども。

戦争後行って一番悲しかったのは、こどもたちの変化でした。街でまとわりついてきます。学校はもうもちろん破壊されていて行ってないんですね。それで街にあふれてます。中には親を失ったり家を失ってストリートチルドレンになってしまっている子どもたちも多くいたと思います。で集まってくるのは「ギブミー・マネー」なんですね。子どもたちアラブ語しか使わない。その子たちが唯一覚えた「「ヘイ、ミスター、ギブミー・マネー」と寄ってきます。それで実際に私たちはカメラとバックを持っているわけですけど、もう何度も取られそうになりました。ほとんど、私が一緒に同行している人の中にはとられたひともあります。それを子どもたちがやるんです。それから街を車で走っていても、子どもたちが逃げてきて私たちの車に乗せてくれっていってくるんですね、「そこで男の人が銃を乱射してる。怖いから車に入れて」と5・6人の子どもが走ってきます。で、なんのことだろうと思うと、近くで、男の人が4、5人の男の人にすでに銃を持ったまま羽交い絞めにされているんですね。それは戦争で家を破壊され家族を殺され、絶望の淵に立たされたその働き盛りの男性がおかしくなって銃を乱射している、そういうところにも遭遇しました。

イラク医師の叫び

病院を訪れると、50度を越える、今度は冬と正反対で非常に暑いわけですね。6月7月ですでに、室内でも50度です。外に出れば計れないんですね、温度計の限度は50度までですし。だけど、そういった中でも、もちろん医療現場では、送電機能は破壊されていて、自家発電しかなく、エアコンは無いわけですから病気の子どもたちはその酷暑と不衛生の状況のためだけでも亡くなっていっています。

そこで働く医師たちは、つい直前までは爆撃で傷つき次々運ばれてくる人々の治療に追われていたわけですが、どんどん死んでゆく、その屍を、庭に次々埋葬せざるを得ないわけです。病院の庭の一角にですね。イラクは土葬の習慣がありますので、玄関の入り口のところまで土饅頭ができてるんですね。これはバグダットでもバスラでも経験しました。そこに案内した時その医師は泣いてました。自分が治療してもどうにもならないほど、爆撃でやられた人たちを埋葬せざるを得なかった医師たちは。

その一人の人が昨年名古屋病院で医療研修に来ました。その方はモハマド・ハッサンという若い医師で、私がバグダット教育病院を訪れた時案内してくれた29歳の青年医師だったんですね。その医師は3時間ぐらいだったと思うんですが、実情を懸命に訴えながら患者の子どもたちのところを案内してくれました。彼はがんの専門医なんですけれども戦争中は病院に24時間中滞在して、懸命に運び込まれてくる負傷者の治療をし、あるいは多くの人に死亡診断するため働きとおしたそうです。非常に優秀な人で、自分自身の手でなんとかしたいということで、周辺の国に訴えて、ヨルダンで会議を開き、それで周辺の各国の医師たちに自分の患者を10人ずつ預けるというふうなことも取り組んでいる人で、こういう人こそ日本によんで医療研修してもらって将来に備えて欲しいと思っていたら、名古屋の方が呼んでくださったんですね。モハマッド・ハッサン医師は広島にも二度ほどお呼びしたので、みなさんも話をお聞きになったことがあるかも知れないんですが。

彼の帰国後、2004年の4月と11月に、ファルージャ、ラマディという私も戦争後に訪れた所なんですけれども、そこにテロリストがかくまわれているという理由でアメリカが包囲作戦で集中的に壊滅する、皆殺し作戦攻撃を2度おこないました。

ファルージャでは病院がまっ先にやられたんですね。アメリカという国はどうしてここまで野蛮なんだろうと私はほんとに理解できないんですが、病院や学校を爆撃します。そういったところにはテロリストが潜んでいるという理由らしいんですね。

病院の傍に作られた墓場

バスラ教育病院のそばには、見渡す限りの地面に1000人をくだらないほどの数のお墓場が出来ています。それは湾岸戦争の後、そこの病院で、劣化ウランの放射能の影響と見られる白血病、癌であまりにもたくさんの子どもたちが死んでいって、正規の墓場に親が埋葬するゆとりがなくて、病院の傍の荒涼たるとこなんですが、ぎっしりと埋葬されて「子どもの墓場」と言われています。

今回の戦争後はそこの傍に、おおきな新しい土饅頭ができているんですね。これは子どもたちと違って大人の土葬ですから大きな土饅頭なんですけれども、70か80の新しい土饅頭があったんですね。つい先ほど訪ねたバスラ教育病院の院長の家族9人が殺された墓なんだと説明を受けました。それはアメリカのいわゆる精密誘導爆撃で、一般民衆は殺してないと今でも言いはっていますが、そのピンポイント爆撃で病院を、バスラ教育病院っていうのはバスラ第一の大きな病院なんですが、そこを爆撃したつもりだったのがそれたんですね。その傍にあったそこの病院長の公舎に当たり、そこに住んでいた家族を全滅させてしまったわけです。院長のほうは病院にいたので命は助かったのですが。本当に許しがたい話しなんですけれども、そういったことをあちこちで見聞きする実態であるわけですね。

メディアが伝えない真実

ちょっと返りますけれども、バグダットの若い青年医師モハマッド・ハッサン医師は名古屋で半年医療研修をして、ほんとに日本中からのいろいろな支援を受けて、意気揚々とバグダットに帰りました。ところが帰国直後に、ファルージャでの大虐殺といわれるアメリカの攻撃が始まり、そしてそのときもまず病院を占拠したわけです。病院から河をわたって逃げようとする医師たちを射殺し、あるいは拘束しました。 近くの他の病院からバクダットのモハマド・ハッサン医師たちに助けてくれというメールが来るわけですね。
しかしモハマド・ハッサン医師たちはファルージャの中には入れない訳です。アメリカ軍が入ってはならないといういわゆる包囲作戦をしてますので、助けに入ることができない。救急車も入ることができない。その状況に絶望を覚えるわけですね。自分の日本で関わってくれた人たちにメールをよこしてくれて、その絶望の底から「いったい自分はどうしたらいいかわからない。死んだほうがましだ」という、どうすることも出来ないメールをよこして来られます。それについてくる写真というのはとても正視できるようなものではありませんでした。

そういったことはほとんど報道されないまま、誰もいわゆるメディアが入れない。NHKはバグダットにいて、時々、バグダットからという放送をします。でこれはしかしNHKの人に聞くとホテルの中に缶詰状態で一歩も出れない。でその写真はイラク人を雇って撮っているわけです。ということでほんとの真実の報道というのはない。

アルジャジーラという中東のカタールの放送局でいろんな真実を伝えてくれていたテレビ局を米軍はほっぽり出しました。イラクに入るべからずということです。そして私も行った時見ましたが、バグダッドのアルジャーラの社屋は私が行ったときすでに攻撃されて破壊されたままで、当時はホテルから報道してたんですが。

そのパレスチナ・ホテルは戦争前、私も泊まったホテルですが、戦争中そこに滞在していたアルジャジーラやロイターをその窓側からアメリカ軍は攻撃をし記者を殺しています。  それは自分たちのやっていることが不当であり、蛮行であるということは彼らも自覚して、なんとかそれを世界に報道されたくない、隠蔽したいということだと思います。

しかし、どこかからそういった実態は漏れて来ます。この8月12日にもイラクのジャーナリストでそのファルージャに入ったイサム・ラシードさんを日本に招聘し証言していただきました。彼は運転手になりすましてファルージャに潜入し撮影したフィルムを私たちに見せてくれましたが、そうっと隠し撮ったものなので非常に不鮮明な映像なんですけれども。広島でも報告会を持ちましたので何人かの方は聞いてくださっていると思いますが、そういった報道を見て、モハマド・ハッサン医師から届いていた悲痛な叫びが、本当に現実にはもっと酷いものなんだということを知ることになりました。

最後までブッシュに付き従う小泉

こういった事態が、あまりにも私たちの日常生活とかけ離れたことがおこっている。これが民主主義大国、世界に民主主義を広めると公言してはばからないアメリカによって行われている。そしてアメリカはイラクあるいはその他すべての中東イスラム諸国を民主化すると言っている。 戦争で多くの無辜のイラク人民を殺し、すべてのインフラを破壊しただけでなく、劣化ウラン兵器を大量に使用してイラクの大地を永久に放射能汚染し、子々孫々までイラクの人民を虐殺する蛮行を犯したアメリカ・ブッシュ政権こそ私からすると最大最悪のテロリストではないか、もちろんこれは私だけでなく多くの人が言ってるわけですけども、それだけのことを繰り返しているそのアメリカに一番今忠実に従っているのが小泉政権としかいいようがない現実です。

賢明にも他国は次々とイラクを撤退しつつあります。あるいは撤退の展望を明らかにしています。そしてサマワに派遣されている日本の自衛隊が今に孤立し、丸裸になってしまうまで小泉政権は置こうとしているのでしょうか。しかもこれが平和憲法のもとで行われている、明らかな戦地、今世界で最も危険度が高いとされている、誰もジャーナリストさえ入れない、従軍記者さえ入れない、そういった状況のイラクに自衛隊員を派兵している現実。手も足も出なくて、大金を自衛隊派遣そのもののために使っているわけですね、日本政府は。

そしてあそこで水や医療支援、学校の修復、そんなことをやって、ま、ぼつぼつやってきたと言いますけれども、自らは出てないし、それもとっくに水支給のプロジェクトもやめてます。やっているのはクウェートから米軍や米軍物資をイラクの基地に運んでいるわけですね、これが日本政府が言っているところのイラク復興支援の実態であるわけです。

インド・パキスタンの若者と平和教育

しかし、そういう今にも先ほど言いましたように、自衛隊員である日本の若者が、この平和憲法のもとでいつ命を落とすかわからない、あるいはイラクの人を傷つけ殺すかもわからない。そういった状況の中に私たちがある。そしてその延長線上に強権的に憲法が改悪されてしまったら、本当に私たちは取り返しのつかないことになる。で、ひとことだけ、もう時間が来てるんですけれども、こういったことは今日きのう始まったことではないということですね。着々と進められてきている。実は私はインド・パキスタンから、核を持って対峙している両国から、毎年続けているんですけれども若者をヒロシマに招いて、その核戦争の実態を学んでもらい、そしてその交流の中でお互いを理解し敵対意識をなくしてもらうということで今年もこの11月19日から広島に招こうとしています。

しかし、二年前にもこのプロジェクトで広島の公立中学校がこのインド・パキスタンの若者との交流を受け入れてくださるということで、ま、結果的には非常にいい交流をしてくださったんですね、学年全体が暖かく、特にインドの核開発の影で犠牲になっているウラン鉱山のジャドゴダというところから若者を呼んでおりましたから、そういうすばらしい交流をしたんですが、その過程では校長が受けてはならない、そういう外部からのそういった平和教育の名のもとにそういったことはしてはならないということで、頓挫しかけました。そのときに校長が言うには、上から来た指示でないと、どういったいい内容でもしない、というふうなことだったんですね。その後ですね。やはりこの、広島市は別として、平和教育という名前がこの広島県から中学校、高校、公立学校から消えて行っている実態は皆さんご存知だと思います。被爆県である広島でこういうことが起こっているということを皆さんも地域の学校の実態とかで知られる機会があると思いますけれども、着々と教育の場でも、同和教育であれ、平和教育であれ、人権、そういった問題について、子どもたちが学ぶ機会を奪われつつある。このままで行けば戦前の事態が再び私たちの上に訪れる日は遠くないという、私自身はそういう危機感をいっぱい持っています。今がそういった状況であるという認識をみなさんと共有したいというふうに考えております。

イラク青年医師、広島研修へ

それから一つだけちょっと宣伝させて頂きたいんですが、イラクの医療現場から、やっとですね、私たちも広島で医療研修にバスラから若い青年医師を呼ぶことができました。これは広島県とNGOの連携プロジェクトで実現できたんですけれども12月まで今研修されています。そういった人たちが自分の患者の実態をスライドで報告してくださるということと、ご存知の拘束された高遠菜穂子さんも自分の知る限りのイラクの今の実態ということを報告してくださる会を10日に持ちますので、寄っていただけたらと思います。さらに11月3日には、イラク帰還米兵夫妻を呼んで報告会をします。劣化ウラン弾被害者はイラクの人たちだけ出なく、そこに派兵されたアメリカ兵たちも犠牲になっており、今回のイラク戦争から帰った兵士が、非常な病気になり働く能力を失い、そして、帰還後生れた子どもは身体的障害を持たされています。その帰還兵士を呼んで、イラク戦争がもたらすもの、放射能兵器・劣化ウラン弾がもたらす被害というのはその戦争に参加したものをも戦争で攻撃をされたものをも等しく、差別なしに、特に放射能においては差別なく、すべての人を犠牲にするという実態を、是非お聞きいただけたらというふうに思っております。

時間をオーバーしてしまいましたがどうもありがとうございました。

(見出しの文責は「九条の会・はつかいち」)



「九条の会・はつかいち」結成アピール

被爆60年目を迎えています。決して忘れてはならない出来事を、記憶に刻むことを大切にし、核兵器廃絶と恒久平和を願い続けてきたのがヒロシマ・ナガサキの60年でした。その背後で憲法第9条は、支柱として大きな役割を果たしてきました。

日本の侵略戦争がもたらした内外の大きな被害への反省をふまえて日本国憲法は制定されました。中でも戦争放棄と戦力の不保持をうたった憲法第9条は、平和な国家として再出発し、武力によらずに国際社会への責任を果たす決意を公にしたものです。

このような憲法第9条の理念はしばしば踏み越えられ、軍備の拡張、自衛隊の海外派兵などが行われてきましたが、それでも一定の歯止めとして今日まで機能してきました。しかし、アメリカの世界戦略に連動するように自衛隊がイラクに駐留している現在、かつてないほどの激しさをもって憲法「改正」が宣伝されてきています。そのような主張の矛先は第9条に向けられています。さらに9月11日に行われた総選挙は改憲派の圧勝に終わり、改憲への動きが加速度的に進むことが危惧されます。

武力によって平和を生み出すことはできません。わたしたちは、世界に武力が行使され続ける今こそ、憲法第9条のもつ意味を大切に守り、その理念の実現のために努力していくことが求められているのだと思います。

わたしたちは、本日ここに「九条の会・はつかいち」を結成し、憲法第9条を変更しようとする動きに対抗するために、様々な方法で取り組むことを決意すると共に、多くの方々がこの動きに連なってくださるよう呼びかけます。

2005年10月8日
「九条の会・はつかいち」結成集会参加者一同






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