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国民保護法学習会の報告

「九条の会・はつかいち」では、次のように世話人会内部で学習会を行いました。

講師の横原由紀夫さんの講演を要旨のみUPします。
(講演録編集責任・事務局)

日時:2006年5月24日(水)19:00〜21:30
場所:廿日市市民活動センター

講師
横原由紀夫さん
有事立法はイケン!広島県市民連絡会共同代表
元・原水禁事務局長 

参加者
廿日市市議会議員
(植木京子議員、石原顕議員、大畑美紀議員)
「九条の会・はつかいち」世話人約18名

写真

国民保護法学習会横原由紀夫さん講演要旨

国民保護法とは
国民保護法は有事法制のうちでも一番恐ろしい法律だということでこだわってきた。 名前は国民保護法だが、内容は、米軍と自衛隊の行動を阻害する要因を排除する法律 と言い換えてもいい。自民党、民主党の議員の中にも、日本を攻めてくる国はたぶん ないだろうと、言う人がいます。問題は、有事法を平時に利用しようとしてくること がこわい。憲法との関連で言えば、日本は憲法第9条があるがゆえに国家緊急権がな いにも拘らず、有事の法体系を作るというのは憲法に違反する。違憲訴訟をしても裁 判所は相手にしてくれないだろう。平時の状態の中に有事のシステムを導入し、国民 の意見を統合していくということが、国民保護法、有事法制を作った政府側の一番の 狙いではないかと思う。平時の状態の時から有事に備えて地方公共団体、指定公共機 関と指定地方公共機関、日赤とかNTTなど多くの企業・団体があるわけですが、こ れらに対して日常的に自衛隊と連携を強めて訓練をしなさい啓発をしなさい、という ことになるわけです。市民にも重い負担がかかる。学校の教育現場で有事の際の対応 を子どもたちに教えたり訓練することになる。
アメリカではソビエトから核ミサイルが飛んできたら机の下に隠れなさいということ が、本気で訓練されていた。有事でないにもかかわらず、この法律ができると平常時 でも訓練をする大義名分ができることが危険ではないか。ある市長も言っていた、反 対なんだけれどもいったん出来てしまうと従わざるを得ないと、自治体としては拒否 できないと。市民はそれに対してどう対抗するか考えておかないといけない。

「有事」について
 有事の際の問題点をいくつかピックアップするとこういうことがあげられる。一つ は生命の危険を伴う業務命令を拒否したときにどうなるか。1956年に米軍が使っ ていた海底ケーブルの修理を米軍から要請された電電公社は、海底ケーブル敷設船の 千代田丸出航命令を出した。当時韓国は日本に敵対意識を持っていて、必要に応じて 撃沈すると言い、現実に砲弾が近くに着弾するという事態があった。出航拒否の指示 を出した組合員は懲戒解雇された。全電通労組でそれを争い、1968年最高裁で 「本来労働契約では生命までは契約条項の中に含まっていないと解釈されるのが当然 である。従って生命の危機が及ぶような作業を拒否したからと言って、それによって 処分することは処分そのものが無効である」という判決が出て判例になっている。こ の判例は大きな力になると考える。こういうことを生かしながら抵抗することが必要 になってくる。
二つ目は具体的にどういう作業になるか。運輸関係、病院関係、行政も含めてさまざ まな作業が業務命令として出されて来るから、そういう作業の内容についても明らか にしておかないといけない。
三つ目は、高齢者、障害者、在日外国人に対して差別的な取扱いがでてくることが想 定できる。それをどうするか、人権をきちんと守らせることを取り組まなければなら ない。
四つ目は、国民保護計画の中で、いざという時の避難誘導に自衛隊がその指揮にあた ることになっているが、これは国際法に違反する。ジュネーブ条約第一追加議定書の 中に、「文民と軍民は明確に区別し、文民は保護する。」ということがあり、住民が 軍事組織の誘導で避難することになると、文民と軍民の区別がつかないので攻撃対象 になる。これは本来政府としてやってはいけないことになっている。

「平時」について
平時の問題点で一つは、地方公共団体の長は住民に対して訓練参加を要請することに なっている。訓練に参加しなかったり拒否した場合にどうなるか。今の社会状況を見 るとそのような住民は、要注意人物としてマークされることになりかねない。共謀罪 にも関連するが、住民同士が監視しあうということになる。共謀罪の怖さは、事実で なくても密告されると警察につかまることになり、市民が市民を監視するという社会 が出現する。これは、戦前の治安維持法体制と同じ事態となる。
二つ目は自衛隊との日常的連携が当然となる。県庁には自衛隊がいる部屋がある。日 常から市庁舎に自衛隊が存在することになるという状況には違和感がある。
三つ目は国民の権利の侵害。物資の調達、貯蔵、管理、土地の収用も含めて所有者が 従わない場合には国民保護法では、内閣総理大臣や県知事が指示すれば強制的に没収 できる。有事の事態でなくとも、平時においても縦のラインが強くなるので、住民同 士の監視・通報・密告の体制が平時の中で作られ、管理・監視社会が一層強くなる。 四つ目は、ある市では戦争非協力宣言をした労働組合があるが、いざとなった時の対 抗手段として、労働組合が戦争非協力決議をするとか、都市が無防備地域宣言をして おくことも重要だと考える。国連、国際赤十字に文書を送ればリストアップされて、 国際的に無防備地域として公開され、攻撃してはならない地域となる。また、国民保 護計画策定にあたって、ほとんどの県が協議員を内緒のうちに決めているが、兵庫県 と長崎県は評議員に弁護士が入り、計画の前文に、有事を招かないための自治体平和 外交の姿勢を示す文章を明確に入れた。ささやかな抵抗だがこれでいざという時に対 抗することも考えておかないといけない。
五つ目は、国民保護計画のもともとのモデルは消防庁が作り、自然災害とごっちゃに して計画が作られている。自治体の自主性と主体性が問われている。日常の防災訓練 の中に戦争の論理が持ち込まれてしまい有事の考え方に慣らされていくことになる。

想定される攻撃事態
政府は着上陸攻撃、ゲリラや特殊部隊攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の四つを想 定している。着上陸攻撃以外は時間的な余裕はないので、コンクリートの建物に逃げ 込みなさいというだけ。NBC攻撃(核兵器・生物兵器・化学兵器)では有効な対策 はない。核攻撃でも地下に避難、外では雨合羽、マスクなどというしか方法がないと いうことになっている。核攻撃まで想定するということに怖さがある。和歌山県美浜 町での訓練に、機雷敷設訓練が出てきた。自衛隊が出て来て海岸に機雷を敷設した。 そういうふうな形で今後訓練がされてくるということになるのでは。憲法を変えて、 自衛隊が自衛軍になり市民生活に入り込んでくるということになる。そういう社会に なることの怖さを考えて欲しい。

アメリカのねらい
有事法はアメリカが必要としている。原文を見ていないが、ジョセフ・ナイという人 が議員を集め対日超党派報告書を作った。東シナ海、日本海には未開発の石油、天然 ガスが眠っておりその総量はサウジアラビア一国に匹敵する。米国はそれを手に入れ なければならない。チャンスは台湾と中国が軍事紛争を起こした時である。米国は台 湾の側に立ち、米軍と日本の自衛隊は中国軍と戦争を行う。中国軍は必ず、日米軍の 離発着、補給基地としての沖縄等の軍事基地に対して直接攻撃を行ってくる。本土を 中国軍に攻撃された日本は逆上し日中戦争は激化する。米軍は戦闘の進展と共に、米 国本土からの自衛隊への援助を最小限に減らし、戦争を自衛隊と中国軍の独自戦争に 発展させていく作戦を米国はとる、と報告している。
これがまさにアメリカの狙いと本音をあらわしている。こういうことでしか戦争は起 こらない。アメリカが何らかの形で行動を起こさない限り戦争は起きない。 中国が今、発展しているのは対外貿易であり、それで国力を維持している。自ら好ん で戦争することはあり得ない。北朝鮮には戦争をする体力はない。北朝鮮の側から攻 撃を仕掛けることは考えられないので、日本に戦争を仕掛けてくる国はない。
今のままアメリカに追随して憲法まで変えるより、東北アジアに軸足を置いて共存政 策に基本を置くほうが日本のためによい。アメリカは約60カ国に軍隊を派遣し駐留 しているが、これらを機能的・効果的に配備し戦争能力を高めるために行っているの が米軍再編です。沖縄や厚木などの基地機能を移動するのは、住民のためを考えて行 うのではなく、米軍の都合のために行っているのが本当のところです。

世界の人が日本をどう見ているか
ジョークの紹介。小泉首相が交通事故で3年間意識不明、目が覚めて、見舞いにきた 幹事長に日本はどうなっているかと聞いたら、すべて順調に進んでいると幹事長は答 えた。誰が日本を動かしているかと聞くと、ブッシュ大統領だという返事が落ち、な どを紹介。イラクの人から、日本には平和憲法があるのにどうしてイラクに自衛隊を 派遣するのか、といわれた。トルコでも、日本には平和憲法があるのに、それを無視 されてどうして日本人はデモもしないのか、といわれた。これが、世界の人たちの日 本観です。

これからの市民運動
日本の憲法は、21世紀の世界の基本になりうる。今の憲法を活用して、有事法体 系、国民保護法などを無用・無効にする運動につなげていくことが必要。現象に表れ た事に反発するだけの行動ではなく、根っこのところを変えていくために影響力を持 つような運動を作り上げていかなければ、と考えます。教育基本法の改定、共謀罪新 設など国が個人の内心の自由に介入し、権利を奪うようなあり方に対して、市民が大 きな声を上げていかなければならない、と強く考えます。



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